第5話
<<
彼女の居た道
>>
↑記事に合った曲を付けています。
音を出しても構わない環境の方はぜひ再生ボタンを。
俺は色々試してみる事にした。
例えば、道に落ちているアイテムなどは拾えないようだし、
他のプレイヤーをドラッグしても、HPゲージも出せないようだ。
どうやら、自分が死んで、
幽霊になっている状態と同じような行動制限を受けているみたいだ。
(2004年3月現在までの仕様では、幽霊では、他人のHPゲージは出せない)
なんだか透明人間にでもなったような感じがする。
これはまた、おかしなバグだなぁ。
ヘルプボタンを押しても反応がないので、
GMコールも出来ないようだ。
なんか珍しいので、このまま環状線でも走ってみるかぁ。
ライバルと遭遇しても、こちらが見えないから、バトルも挑まれない。
ん?後ろから馬の走る音が近づいてくる?
この速度域に追いついてくるヤツがいるのか!?
い、いや、そんな事より、足音が聞こえると言う事は!?
来た!
名前はKanako
かなこ、女性か・・・
手に、消えたランタンを持っている!?
ランナーか!!
速い!
この俺が、あっという間にチギられてしまった・・・
あんな速さのランナーが居たなんて・・・
しかし、見た事の無いヤツだった。
新顔か?
いや、それにしては走りこんでいるようだった。
コースを知っていたし、テクニックもかなりのものだ。
大抵のランナーの名前と格好は知っているハズなのだが・・・
まぁ、まだまだ上には上が居たという事か・・・
<数日後>
あれから俺は、色々実験をしてみた。
友人に、俺がSweet Dreams INN でログアウトする所を見ていてもらった。
友人からは、しっかりログアウトして、消えてるように見えているらしい。
しかし、俺はSweet Dreams INN に居るままだ。
これは、俺は別な次元・・・というか、俺が名づけた「夢の世界」の側に移動しているらしい。
この「夢の世界」では、通常世界のアイテムには触れられないし、
通常世界のプレイヤーキャラに、干渉する事もできない。
更に、通常世界の人間からは、夢の世界に居る俺の姿は見えないし、音も聞く事ができない。
そして、例の信じられない速さで走る、Kanakoというランナーだ。
俺は、彼女に再び会うために、毎日、環状線を走った。
通常世界、夢の世界、両方でだ。
そして、毎日確実に、彼女と遭遇する事に成功した。
やはり彼女は、夢の世界の方でしか会う事ができない。
しかも、夢の世界では、彼女の足音がハッキリ聞こえるし、
HPゲージも出す事が出来るのだ。
彼女は、夢の世界の住人なのだろうか?
その謎は未だに解けていない。
なぜなら、俺は彼女に追いつく事が出来ないからだ。
何度か遭遇する瞬間に呼び止めたのだが、彼女は耳を貸さず走り去る。
俺は会話がしたくて、後を追う。
ランタンも点灯させるのだが、相手にされてないのか彼女のランタンは消えたままだ。
俺は、<頭が変だ>と思われるのを承知で、仲間に彼女の事を話してみた。
すると意外にも、1人の仲間から、「彼女の事を知っている」という答えが返ってきた。
今から3年前、その頃もミッドナイトランは行われていた。
その当時の最速のランナー Jinrai(迅雷)、有名な人らしいが俺は知らない。
Jinraiには、共に走る恋人が居た。
それが例の彼女、Kanakoだと言うのだ。
俺の話すKanakoの服装、速さなどから見て、同一人物じゃないかと言う。
しかし、その女性がなぜ、夢の世界(俺が勝手に名づけたんだが)で走っているんだ?
あのバグを利用して、夢の世界で走りの練習をしているのか?
毎日現れるが、その目的とはいったい・・・?
<更に数日後>
俺は相変わらず、あの女の尻を追っかけていた。
(変な意味ではない)
あれから俺は、自宅のパソコンを新調、改造し、
かなりのスペック(性能)のパソコンに仕上げていた。
これでもっと速く走れるはずだ。
しかし今日もランタンを点けてもらえず、相手にされない・・・。
以前よりは、ついて行けたものの、今回も離されて、見えなくなってしまった・・・。
いったいどういう速さをしているんだ・・・。
ん?
ランナーの仲間からICQ(チャットソフト)で連絡が来た。
なになに?
「Hazard、大変だ!
この間、お前が言っていた女だが、友人から新たな情報が入ったんだ。
彼女、Kanakoのプレイヤーは、もうこの世の人間ではない!
亡くなっているんだ、2年前に事故でな・・・。
それ以来、当時最速だったランナー、Jinraiも姿を消したそうだ。
UOから引退したという噂だ。
もうその女を追うのはやめろ、なんだか危険な香りがするぞ。
現に、MyUOで、YamatoをKanakoで検索しても、1人も存在しないぞ!
(2004年3月現在、事実です)」
・・・・・
なんだと!?
いったいどういう事だ!?
ヤマトシャードに、Kanakoというプレイヤーキャラは存在しない!?
そんなバカな・・・
あれは・・・あれは、幽霊だとでも言うのか・・・?
まてよ、それなら・・・
「なぁ、そのJinraiとKanakoの友人だった、って人に、
Jinraiと連絡が取れないか、聞いてくれないか?」
とICQで送ってみた。
すると、Jinraiのメールアドレスを知っていると言う。
俺は、その友人に、JinraiをUOへ呼び戻せないか、頼んでみる事にした。
<そして、数日の時が流れ・・・>
俺のパソコンのメールアドレスに、1通のメールが届いていた。
Jinraiからだった。
次のページへ
戻る