=後編=

↑記事に合った曲を付けています。
音を出しても構わない環境の方はぜひ再生ボタンを。






残された道はこれしかない。

これにすべてをかけるしかない。





ベノナーガ「おいおい、黙ってないで教えろよ。」

エクソダイバー「タウンクライヤーの話をよく聞くんだ!」

ベノナーガ「ん?」





タウンクライヤー「最新情報だよ〜!」

タウンクライヤー「明日夜10時にデーモン軍団が町を襲う。」

タウンクライヤー「プレイヤーたちは町を死守せよ。」

タウンクライヤー「失敗すれば町はデーモンに乗っ取られるだろう。」





ベノナーガ「おいおい、イベントが何だっていうんだ? オレたちは今それどころじゃないだろ。イベントなんてトラメラーに任せておけばいいじゃねえか。」

エクソダイバー「よく考えてごらん! イベントの時はたくさんプレイヤーが集まる。」

ベノナーガ「そりゃそうだろ。」

エクソダイバー「プレイヤーが多く集まるなら、それに伴ってシステム側もたくさんのNPCやモンスターを導入&操作しないといけない。」

ベノナーガ「それで?」

エクソダイバー「ということはだ、システムリソースは一定なんだよ? だとするなら、そのイベントの時はシステムリソースのほとんとはイベントの現場に集中することになる!」

ベノナーガ「な、なるほど! ということは、その間だけはあのダンジョンの中は手薄になるということか!」

エクソダイバー「その通り! その時を狙って一気に突っ込むしかない!」

ベノナーガ「おっしゃあ! やってやるぜぇ!」

エクソダイバー「今はとにかく不穏な行動は避けよう。諦めた”フリ”をしていた方がいい。」

ベノナーガ「そうだな。」







皆がイベントで戯れている間、我々は決死の覚悟でブリタニアを救わなくてはならない。

向こうが「作られたイベント」なら、こっちは正真正銘の「真剣勝負のイベント」だ。

心してかからなくてはならない。













そしていよいよ当日。

時刻は夜10時を回ろうとしている。





エクソダイバー「よし、時間だ。行こう!」

ベノナーガ「行くぜぇ!!」







運命の時間の始まりであった。

ブリタニアの運命は、この二人に握られている。





エクソダイバー「思った通りだ、誰もいない!」

ベノナーガ「このまま一気にいってやる!」

エクソダイバー「気をつけて! 敵が隠れている可能性もある!」

ベノナーガ「そんなことは百も承知だ!」







エクソダイバー「う、やはりいたか!」

UO「おとなしく滅びるがいい。」

ベノナーガ「なめんじゃねぇ! UOだが何だか知らんがぶっ潰してやるッ!」







ベノナーガは用意していたNPCの人形をすべて実体化させ、UOの目を眩ませようとした。



が....



UO「貴様のハッタリ技など通用しない。死ね。」











エクソダイバー「うううう...!」

UO「次は貴様だ。貴様のキャラとアカウントをシャボン玉のように消してやろう。」

エクソダイバー「逃げろーっ!!」


UO「逃げても無駄だ。貴様はすでに射程距離内にある。」











すべては終わったかのように見えた。

が、次の瞬間、白いLB王は自分自身に異変が起きていることに気づく!







エクソダイバー「最初からこれが狙いだったんだよ。」

UO「ぬうううう!!」

エクソダイバー「ベノナーガが連れてきたのは私の形をしたただのNPCさ。私は最初からステルスを使ってここまで走ってきたのさ。」

UO「うがああああああああああっ!!」

エクソダイバー「もうシステムは停止する! お前の負けだッ!!」

UO「うぎゃあああああああああああーーーーーーーーーっ!!」







すべてが終わった。

プレイヤーたちはAIに勝ったのだ。



エクソダイバー「これで終わったんだな...。」

エクソダイバー「後はサーバーがダウンするのを待って、OSIの処置を待つだけだ。」

謎の声「さて、それはどうかな?」

エクソダイバー「なにっ!?」















エクソダイバー「なにいいいいっ!?」

UO「見事な健闘ぶりだったよ。エクソダイバー君。」

エクソダイバー「ひょ、ひょっとして、すべてがイベントだったのか!?」

GM「その通り。いかがでしたかな?」

エクソダイバー「ふがあああああああ!!」

UO「はっはっは。」

GM「一世一代の大イベントだったでしょう。おっほっほっほ。」

エクソダイバー「なんてこった・・・!! そういうオチだったのか・・・!」

GM「お疲れ様でした。それでは、エクソダイバー様を仲間の元に送って差し上げますね。」

エクソダイバー「あ、はい。どうも...。」



こうして私は仲間の元へ送られた。

すでに仲間のアカウントブロックは解除されていたようだ。







私は早速仲間に一部始終を話した。



エクソダイバー「というわけなんだよ。」

デッドワイルダー「笑えるかも。」

マグナテラ「まったく、人騒がせな...。」

ベノナーガ「UOってのはこういうもんなんだろ? 違うのか?」

エクソダイバー「まぁ、いいや。もう終わったことだし。」

デッドワイルダー「そうだね。」

ベノナーガ「なぁ、どうせだからブリへ行ってみないか? デーモン討伐イベントがまだやってるかもしれねえぞ。」

マグナテラ「おお、いいねぇ。見に行こうよ。」

エクソダイバー「おっけい。」



我々はすぐにブリ銀前に飛んだ。

しかし、そこには我々の想像を絶する光景か繰り広げられていたのだ。







マグナテラ「凄まじい状況だな...。」

デッドワイルダー「相当激しいイベントだったんだろうね。」

ベノナーガ「戦いってのはこういうもんじゃねえのか? オレはこれくらいがちょうどいいがな。」

エクソダイバー「待てよみんな! どうも様子がおかしい!」

ベノナーガ「どうした?」

エクソダイバー「生きているプレイヤーが誰もいないじゃないか! これは異常だよ!」

マグナテラ「そういえばそうだな...ほんとに誰もいない...。」

デッドワイルダー「みんな死んじゃったのかなぁ。」

ベノナーガ「まじで人っ子一人いねえぞ! どうなってるんだぁ!」



その時である。

タウンクライヤーが妙なことを口走り始めた。







タウンクライヤー「これをもちまして、ウルティマ オンラインの全サービスを終了させて頂きます。」

タウンクライヤー「皆様、長い間本当にありがとうございました。」

タウンクライヤー「願わくば、また、いつかどこかで。」







ベノナーガ「一体どういうことだぁ!」

マグナテラ「何がなんだか訳がわからないよ!」

デッドワイルダー「何が起こってるのかなぁ?」

エクソダイバー「...!!」



私の心の中に、”ある恐ろしい考え”が浮かんだ。

もしやこれはすべて...



デッドワイルダー「ちょ、ちょっと! みんなあれを見て!」

ベノナーガ「お?」

マグナテラ「ん?」

エクソダイバー「え?」







デッドワイルダー「世界が壊れていってる!」

エクソダイバー「いや違う! 腐っていってるんだ!」

ベノナーガ「そんなことはどうでもいい! 逃げるぞ!」

マグナテラ「とりあえずムーンサーバーに移動だ!」







我々はムーングロウのマグナテラの家に避難した。

が、もうすでに誰もが気づいていた。

どこへ逃げても無駄だということを。







デッドワイルダー「いったいどうなってるのかなぁ? どうなっちゃうのかなぁ?」

エクソダイバー「今やっとわかったよ。すべてが。」

ベノナーガ「どういうことなんだ!?」

エクソダイバー「デーモン討伐イベントも、我々のイベントも、すべてはUOのAIが設定したものだったんだよ!」

マグナテラ「なに、ということはあのGM達もか!?」

エクソダイバー「そうさ。UOがNPCを作り出してGMイベントに見せかけてたんだよ!」

ベノナーガ「くそっ・・・! すべては罠だったのか・・・!」

エクソダイバー「いや、違う。罠とかそういうもんじゃない。」

デッドワイルダー「え、どういうこと?」

エクソダイバー「あれは、ブリタニアが最後を迎えるにあたって、UOが我々に与えてくれたせめてものサービスだったんだよ...!」

ベノナーガ「なるほど...。」

マグナテラ「じゃあ結局、UOは終わってしまうのか?」

デッドワイルダー「そうかも。」

エクソダイバー「もうすぐここも腐っていくだろう。そしてすべてが終わるのさ...。」

マグナテラ「ああ、もうそこまで来ている!」







デッドワイルダー「わあああ! そんなぁ!」

マグナテラ「もう終わりか...!」

ベノナーガ「あばよ、ブリタニア! そしてみんな!」

エクソダイバー「今ならわかる。UOは後悔などしていない・・・!」







こうして、すべてのサーバーがダウンし、UOは終了した。

おそらく数分以内には、すべてのハードディスクのデータは消去され、ソースコードも消去されるだろう。

私はUOのクライアントを閉じ、アンインストールしながら、なぜこんなことになったのかを考えていた。



UOはこれまで発展の一途をたどってきた。

新しい世界、新しい土地、新しいアイテム、そして新しいシステム。

それらによってプレイヤーは、長きに渡りブリタニアでの生活を満喫してきた。

が、それによってプレイヤーの意識は、確実に精神主義から物質主義に移行していった。

際限なく沸き出てくるGP

所持すること自体が勲章であるAF

贅沢の極みであるレアアイテム

数を集めることだけに意味があるクリスマスアイテム

国境を越えた物流であるシャード間移動

そしてRMTのためだけに集められる諸々の資産・・・

いつしかブリタニアの民は、ただ物を集めて蓄えるだけのアイテム至上主義に染まっていった。

しかし、ブリタニアの王であるロード・ブリティッシュ王はそれを良しとしなかった。

真に重んじるべきは3つの根本原理。

そして、それらから派生する8つの徳。

そして、最も重要なカルマの理論。

つまり、「善」を為せば良いことが自分に返り、逆に「悪」を為せば同じように悪いことが自分に返るという法則。

そういった「善」と「徳」を第一に考えるロード・ブリティッシュ王が、このようなUOを見て快く思うはずがない。

そう。つまりあのオンラインに現れた「UO」こそ、ロード・ブリティッシュ王の意思が具現化したものだったのである。

堕落にひた走るプレイヤー達に見るに見かねた「UO」は、自らを破壊することによってその長い歴史を閉じた。

それがロード・ブリティッシュ王の意思だったのである。

UOは終わってしまった。

それは紛れもない事実だ。

そして私はそれを受け入れた。




ただ、

もし、

UOに変わるオンラインゲームが現れるのなら、

あるいは、何らかの理由でUOが復活するのなら、

今度こそ、

今度こそ同じ過ちを犯さないようにしたい。

今度こそ理想のブリタニアを作りたい。

いつしか

そうなることを願って...




そう思いながら私は、シャットダウンしていく画面をただ見つめていた。





















 lll  ll  , /::/.// /::::::::\ヽヽ  ヽ ヽ
      ///_.//:://  ̄ ̄ ヾi,::\ ト|ヽ| 
 lll  ll //'  /'`メ、    ,r'`ヽ::::ヽl      ああ…
     / ====u== ≡  /=u==== .|     無念…
 /'⌒| ll|:::::::`ー--‐'" :::::::::::\‐-‐'" |      無念だ…!
 | l⌒| |::::::ヾ~し'"ソ ::::U::::::::::\ー' |      8話分の話を3話にしてしまったのは無念…
 .| |二|ll |:::::::::::` ̄ ノ r‐:::::::::::::::::ヽ、      しかし…
  | !  | |::::::/ ̄ ~     ̄  ‐-- '      仕方ないのさ…これも…!
  ヽこ, リ、::/:::::ム──────‐‐i .|      無念であることが「生の証」だ……!
    /ミ :::\::::::::::::::          |     思うようにいかねえことばかりじゃねえか…
   /ミ  :::::::\::::::U:::: ミ三彡   /       HPのネタを作るってことは…!
   /ミ   ::::::::::\::::::::::::::::::::::::::::::/        不本意の連続…
  /ミ     :::::::::::::\::::::::::::::::::::/
  /ミ      ::::::::::::::::\::::::::::/;|`ー,
  ヽ、      :::::::::::::/;;ヽノ;;;;;;| 7


              _,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,___
             ./=--- 、ヾい| | | / / -─ 、三、
             l三!      ̄ ̄ ̄     ヾE|
             !彡  -- 、 ─── ,─    lミ!
            .F!/\ ̄\三三三/ ̄_, ヘ ',ミ!  世のプレイヤーどもが
            F!´ `'-ニ、 、__    , -' - '"`'.ハ!   本当のことを言わないなら
           , -l=!   二二、ノ   L二二_  F/、
           | f=E!  ニ‐-゚- 7    f ‐゚--‐ニ |;f_!l   俺が言ってやるっ・・・!
           | |ソ!!  __二ニ,'    .! ニ二__  |kヒl!      
           ヾ 、!;! -___/!     !\_- .!ノノ
             ̄| / __ L_  _!___ \ |''"    思い出はアイテムより重い・・・!
             /!.  / -──────--! .|、
            /::::!.  ヽ二二二ニニニ二ソ  /:ヽ
           /:::::::::ヽ、      ─      /:::::::|-、
      _,、-‐ '''"|::::::::::::|  ヽ、        ,  ' .!::::::::::|:::::::`"''- 、
_,,、-‐ '":::::::::::::::::::::|::::::::::::|\  ` ─── '"  /|::::::::::|::::::::::::::::::::::`"'''-


        ,. -─‐- 、
.       /        \
      ,,,/    _ー---‐_ニ   ヽ,,、
    i゙iil l   _ ̄ ̄ __   / !!゙i       クク……
.   │n.!| '"~二`  ´二~゙` :| r_、|
   |i!|f.|.| ニ=。=,  、=。=ニ |:|.」|l|      ゆかい ゆかい・・・
.   i |l_l.! 二ニ{   }ニ二 :!| l.l i|
  / i!!ヽ|! r‐--‐} ''' {ー--‐、 |!ン’!!ヽ    UsOショットや4/1ネタでプレイヤーが笑い転げる姿
-‐'¬ iii l. =ェェェゝ,__,イェェェ= :l !!i r-ゝ、.._  この世の中に
    |il ii ヽ._    __    _,.イ| i! ii |     これほどの愉悦があろうか・・・・・
   │l!l i! ト、::\.___,/ /:||. | !!|
.   l !|.! !|. \::::::::::::   / |:| ! iリ     そして、その結果がコミュニティの活性化とくれば
    ヽ! W:|   \   /   |::|ル'|        なお申し分ない・・・・
.     |:::::::|  ,rー゙ー':--:--y'::::::::!
      |:::::::| / " 二'二'ニヲ:::::::!       ククク……
.      |:::::::|/ / / '' ─:ー:ぅヽ:::l
))ノ ,,  l:::::/ './  厂 ̄´   \ __(( r'yr
:::( ((   y′    ノ;-─-r、     \))`)::ノ


    /´ ̄ ̄ ̄`丶-‐z__
    /            ≦、    ちょっとまて・・・
   ,'          /ニヽ、ゝ    
   |       ,ィ/レ'\_, >``    今気がついたんだが・・・
   |    r=| | ̄=。==~「|      
   |    |ニ| | u `二´ U\    「無限の意思」を企画してから
   |    ヾ,U    __ノ┌_ \   一年近く経ってないか・・・?
   ,.|    /ヽ /==-┬` ̄  
 / \/   ヽ u ⊂ニ.\ 
'" \   \   `ー┬‐r┘ /    いや・・・
   \   \_/l L_  /    
      \_ \| |/ |ェェェェ|     気のせいか・・・
       /  |く/|  |






戻る