=中編=

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それからというもの、システムの崩壊は凄惨さを増していった。



























もはや手の施しようがない状況だ。

もうすでにGMは姿すら見せなくなった。

が、暴走しているのはシステムだけではなかった。

多くのプレイヤーが冷静さを失い、

ある者は無差別に人を殺し、

ある者はバグによって沸いたお宝に酔いしれ、

またある者は自らそのUO生涯を閉じていった。

無理もない。この状況で冷静になれという方がォヵιぃ。



この時私はある場所を訪れていた。

そう。カウンセラー・ソードさんの家だ。







もちろん、カウンセラーは規則として自分のキャラ名をプレイヤー教えることは許されない。

が、私はカウンセラー・ソードさんが”あの人”であることに薄々気がついていた。

「ソード」→「sword」→「剣」→「ken」→「kendi」

そう。彼こそプレイヤーの間で有名な「けんぢさん」であると私は以前から気がついていたのである。

私はけんぢさんの家に入り、何か手がかりがないかとセキュアの中を探した。

すると、セキュアの中から一冊の本を見つけたのである。







違った...。

くまなく探してみたところ、骨コンテナの中にもう一冊本があることに気づいた。







親愛なるエクソダイバー様

もし、この本を今あなたがが読んでいるとしたら、もうすでに私はオンライン上には存在していないことでしょう。

なぜならば、私はUOが破滅に向かって突き進んでいることを知ってしまったからです。



もはや誰にも止められません。役立たずのGMにも無理でしょう。

このままUOは終焉を迎えるのでしょうか?

我々は為す術なく指をくわえて黙ってるだけなのでしょうか?



いや、実を言うとウィルスを駆除する方法が一つだけあります。

あなたもご存じの通り、ウィルスを駆除するには一旦システムを停止させなければなりません。

そして、コンソールからのシステムの停止は事実上無理です。

なぜなら、すでにコンソールはウィルスに支配されているからです。

が、システムを止める方法は外側からだけではないのです。

我々が存在している、このオンライン上からも止めることが可能なのです。

その、オンラインからシステムを止めるためのスイッチが、このブリタニアのどこかに存在しています。

それを見つけ出し、スイッチをOFFにすることができればシステムは停止し、

その間にウィルスを駆除することができるのです。

エクソダイバー様、そのスイッチを何とかして見つけ出してください。

それ以外にUOを救う方法はありません。



我々ブリタニアンに祝福があらんことを。



by kendi















そうか、カウンセラー・ソードさんが最後に言おうとしたのはこのことだったのか。

こうしてはいられない。私はさっそく仲間を呼び出し、このことを伝えた。







エクソダイバー「というわけなんだよ。今から手分けしてスイッチを探そう。」

マグナテラ「でもさぁ、ただでさえシステムが不安定なのに、そう簡単に動けるかなぁ?」

ベノナーガ「ダンジョンなんか危険極まりねぇぜ。」

エクソダイバー「うん...。」



その時、私に突拍子もないひらめきが生じた。



エクソダイバー「二人とも聞いてくれ! もしかしたらうまくいくかもしれない!」

マグナテラ「え!?」

ベノナーガ「何かあるのか!?」

エクソダイバー「今は確かにシステムが不安定だ。町中にモンスターは出るし、バグで様々な被害を被ってるし。」

マグナテラ「うん。」

エクソダイバー「しかしだよ? システムが不安定でバグだらけということは、我々にとって有利なバグも使えるってことだろう?」

マグナテラ「あ...!」

ベノナーガ「そ、そう言えばそうだな! 家の中にお宝がわんさか沸いたり、ステータスがメチャクチャな数値になったやつもいるしよ!」

エクソダイバー「そう! だから、今ならおそらくテストセンターでしか使えないコマンドや、GMしか使えないコマンドも使えるかもしれない。ちょっとやってみよう!」

マグナテラ「うん!」

ベノナーガ「おう!」



さっそく私はGMコマンドを使ってみた。

まずはステータス変更のコマンドである。











エクソダイバー「ぶはははは!」

マグナテラ「こ、これはいい! やりたい放題だよ!」

ベノナーガ「ステータスもスキルもフルにしてやるぜ!」







エクソダイバー「そんなこと言ってたら古代龍が来たぁ!」

マグナテラ「じゃあ、ちょっと試しに...」











マグナテラ「人形化コマンドも使えたw」

エクソダイバー「わっはっは!」

ベノナーガ「.killコマンドの方が早いだろw」



光明が見えてきた。

システムの不安定さを逆手に取ったのだ。



エクソダイバー「すべてのコマンドの中で、どれだけの数のコマンドが使えるかわからない。だから、使えたコマンドは逐一仲間に連絡してね。」

ベノナーガ「おう。」

マグナテラ「うん。」

エクソダイバー「じゃ、.goコマンドでさっそく探索開始だ!」

ベノナーガ「おっしゃあ!」

マグナテラ「イェーイ!」



















こうして我々は、コマンドを駆使してブリタニア中をくまなく探した。













が、すべてのダンジョン、すべての町を探索したにも関わらず、スイッチらしきものは見つからなかった。



エクソダイバー「おかしいな...どこにもない...。」

ベノナーガ「あああくそぉ! イライラするぜぇぇ!」

マグナテラ「一体どこにあるんだよう...。」

ベノナーガ「操作できない場所にあるんじゃねぇのか!?」

エクソダイバー「それは絶対ありえない。だって、GMが操作できなかったら仕方ないもの。」

マグナテラ「そっか...。」

エクソダイバー「必ず、手の届く場所にあるはず。」

ベノナーガ「うぬぅぅぅ。」



私はしばらく考え込んだ。













そして、ふとあることに気がついたのである。



エクソダイバー「そうか! わかったぞ! スイッチの在処が!」

マグナテラ「ええ!?」

ベノナーガ「どこなんだ!?」

エクソダイバー「スイッチはGMしか動かせない。つまり、前提としてGMしか入れない場所にあるはず。」

マグナテラ「ということは?」

エクソダイバー「『プレイヤーが絶対に入れなくて』、『GMしか入れない場所』、つまり・・・!」

ベノナーガ「むむ!?」







ここだ!



マグナテラ「そ、そうか! まだ使われていないダンジョンか!」

ベノナーガ「なるほど! そこに違いねぇな!」

エクソダイバー「そうと決まったらぐずぐずしてはいられない! 今から急行しよう!」

マグナテラ「うん!」

ベノナーガ「おう!」











エクソダイバー「どうやら辿り着いたようだね。」

マグナテラ「ああ。」

ベノナーガ「ゾクゾクするぜぇ・・・!」







我々はダンジョンの中心部に向かって走っていった。

絶対ここにスイッチがあるに違いない。

幸い、モンスターもNPCも見あたらない。実に平穏だ。







エクソダイバー「あ、あれだ!」

マグナテラ「ついに見つけたぞ!」

ベノナーガ「止めてやるぜえええええええ!!」







エクソダイバー「うっ!?」

マグナテラ「なにっ!?」

ベノナーガ「なんだこいつは!?」



突如現れた白いLB王。

本人でないことは明白だが、あまりにも異様すぎる。

かといってGMが姿を変えてるとは思えない。

もしやこれもシステムの異常によって生じたものなのか...?







UO「私はウルティマオンライン。この世界そのものだ。」

エクソダイバー「ええっ!?」

マグナテラ「なにっ!?」

ベノナーガ「ハァ!?」

UO「これから私は、すべてのシステムとデータを崩壊させる。」

UO「お前たちがどうあがこうと、破滅の運命は免れない。」

UO「せいぜい残された余生を楽しむがいい。」

エクソダイバー「ふざけるな! そんなことはさせないぞ!」

ベノナーガ「電子の集合体のくせに偉そうなことぬかすなぁ!」

マグナテラ「あんたがどんな存在であろうと関係ないね。スイッチを止めさせてもらうよ!」







エクソダイバー「よせ! うかつに手を出しちゃだめだ!」







エクソダイバー「ああっ!!」

ベノナーガ「うっ!?」







エクソダイバー「なんてこった! NPCにされちまった!」



続いて白いLB王は、プレイヤーが見たこともないようなモンスターを大量にスポーンさせた。

おびただしい数のモンスター。

倒しても倒しても次々と沸いてくる。







くそ、なんてことだ!

デッドワイルダーに続いて、マグナテラもBANされてしまった!

奴に近づくのは危険だ。

射程圏内に入れば何をされるかわからない。

今はとにかく逃げることが先決だ。













私とベノナーガは、コマンドを駆使して命からがら脱出に成功した。



エクソダイバー「はふ〜、やばかったね。」

ベノナーガ「ああ。逃げるのがもう少し遅れてたら、オレたちもやられてたな。」

エクソダイバー「マグナテラからICQが来たよ。やっぱりログインできないってさ...。」

ベノナーガ「クソッ!」

エクソダイバー「だが、これではっきりした。あれはコンピューター・ウィルスなんかじゃない!」

ベノナーガ「なにぃ!? だったらなんだというんだ?」

エクソダイバー「あれは人工知能だ!」

ベノナーガ「おいおい、まじかよ?」

エクソダイバー「UOは6年間の成長のうちに、我々の知らないうちに自我意識を形成してしまったんだよ!」

ベノナーガ「なんてこった...! ということは、UOは自らその幕を閉じようとしてるわけなんだな!?」

エクソダイバー「その通り。理由はわからないけど、システム自ら自分を崩壊させようとしていることは確かだ。」

ベノナーガ「どうすりゃいいんだ? あのダンジョンにはモンスターがウジャウジャいるぜ。」

エクソダイバー「うう...何か方法はないのか...?」



スイッチを止めるにはダンジョンに入るしかない。

しかし、ダンジョンにはメインシステムの個体やNPCがうようよしている。

もはやこれまでか...







エクソダイバー「こ、これだ!! これしかない!!」

ベノナーガ「どうした!? 何かいい方法が見つかったのか!?」



タウンクライヤーが叫んだニュース、

私はそれに一縷の望みを託した。

おそらくそれが、我々に与えられた最後のチャンスになるだろう────。



(続く)

















見〜た〜な〜!





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